毎日暑い日が続いています。
そろそろ全国的にも梅雨に入ってくる時期になるでしょうか?こんな日が続くと、つい、イライラすることも
多くなってしまいます。 そのような時期に、5月29日職場のハラスメント対策の強化を柱とした 女性活躍・
ハラスメント規制法が参院本会議で可決成立しました。パワハラや セクハラ、妊娠出産を巡るマタニティー
ハラスメントに関し「行ってはならない」 と明記することや、事業主に対して、相談体制の整備などの防止
対策を取るように 初めて法律で義務付けを行うことになりました。
また、パワハラ対策の義務化は 大企業では2020年4月から開始され、中小企業は2020年では、努力
義務 としてスタートし、その後2022年以内に義務化することとなっています。 ただし、働き方改革では
罰則付きの規制が導入されましたが、今回のハラスメント 規制法は罰則を伴う禁止規定ではないために、どこ
まで確実に実施できるかという のは今後の課題になってくるでしょう。
今回、この背景には厚生労働省が2016年、企業に実施した調査(4587社が回答) では、「パワハラが職場
や企業に与える影響」(複数回答)として、「職場の雰囲気 が悪くなる」「従業員の心の健康を害する」が
約9割となりました。また、約8割は 「従業員が十分に能力を発揮できなくなる」「人材が流出してしまう」と
回答して おり、約7割が「職場の生産性が低下する」と答えています。 また、パワハラによる労働局などへの
相談件数が増加し、2017年度には全ての 相談件数25万3005件でした。その中で、パワハラを含む
「いじめ・嫌がらせ」 の相談は、約7万2000件となり、相談内容別では6年連続最多となっており、その
被害も深刻化していることなどが背景となっています。
セクシャルハラスメントは、1999年施行の改正男女雇用機会均等法で事業主の 配慮義務を定め、2007年
から事業主に防止措置を義務付けました。 また、マタニティーハラスメントは、2017年から改正男女雇用機
会均等法と 改正育児・介護休業法で事業主の防止措置を義務化しました。パワハラは、 2012年1月に定義が
発表されて以来、ようやく今回の国会で労働施策総合推進法 を改正し、初めて防止措置義務を規定することに
なりました。どこかで「やっと」 という気持ちとここまで時間がかかった理由には、「ハラスメント」そのもの
が「受け手にとってどう受け止めるか?」という部分から「どこまでが指導で、どこ からがハラスメントか?」
という「指導とハラスメントの違い=指導との境界線」が 見えにくいというに関しては、まだまだ課題として
残っていくように感じています。 そうなると、このような課題を含んだ中で今回の規制は、「罰則を伴わない規制」
と なっています。せっかく作る規制です。今までのように被害者が泣き寝入りせざるを 得ない状況はなくしていか
なければなりません。そうなると次には「どこまで、どんな 形で確実に実施されることになるのか?」という
「実効性」に関しても今後しっかりと 継続的に見ていく必要があります。
今回の規制では、セクハラ・パワハラ・マタニティーハラスメントの3つのハラス メントの対策として国・事業主・
労働者に対し、他の労働者の言動に注意を払う責務を 規定しており、事業主には、被害を相談した労働者の解雇など
不利益な取り扱いを禁止 することになります。
(具体的なポイントは、後半の「事例検討」で触れてみようと思います。)
2012年にパワーハラスメントの定義が発表されてから、7年の中で世の中の情勢は、 更に変化してきています。
社会の情勢の変化があることで、1人ひとりの価値観や考え方 も大きく変わってきています。今回の規制によって、
これまで以上に「世代間ギャップ」 を埋め合わせるということが必要になると感じています。しかしながら、「それ
がどこ まで可能なのか?」、「今回のハラスメント規制法の成立をどのように職場に組み込んで いくのか?」まだまだ
考えないといけないことが多くあり、一概に「安心」とはならず、 中途半端な形になってしまい現状よりも更にモチ
ベーションの下がる職場にならないよう にすることが必要だと感じてなりません。今後、このハラスメント規制が確実
に職場の中 で実行できるように1人ひとりがしっかりと考えていかなければなりませんね。そして、 このような話題も
安心して、積極的に話せるような職場づくりが必要かと改めて感じて います。
産業カウンセラー
大槻 久美子