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●カウンセラーのつぶやき● ~パワハラ相談事例より「平等と公平の言葉の理解がないために」~

 

暑い夏がやってきました。今年は、湿度が高い日数も多いようで少し体調を崩しやすくなっています。いつにも増して熱中症対策などが必要です。さて、今回は久しぶりに最近起こったパワハラ相談事例をご紹介します。

このところ相談内容は、パワハラ案件が多くなっています。
ただ、その中でも完全にパワハラになる事例というのは少なく「お互い様案件」や「上司の指導力、伝達力の問題」などが多く見受けられます。パワハラという言葉が世間に認知されるようになったのは良かったのですが、その反面で上司が気を遣いすぎる傾向が見られます。また、それ以上に上司の説明不足という面もあり、結果的には、コミュニケーション不足が多くの相談内容になっています。上司や先輩もパワハラを怖がらずに指導することは、大切なことなのですが、そこには、しっかりと言葉の意味を理解することも必要になります。今回は、その言葉の意味を理解しないまま使ってしまいパワハラ問題になってしまった事例のご紹介です。

加害者:B課長 56歳 男性
被害者:Aさん 35歳(入社13年目) 男性
関係者:C君 25歳(入社3年目) 男性

Aさんが「パワハラを受けた」とのことで相談室にやってきました。
聞いてみると、7月に出た賞与の支給率が、同じ部署で一緒に仕事をしている入社3年目の後輩C君よりも 低いことに憤りを感じて相談にきました。内容を聞いてみると、先日出た賞与を後輩のC君と見ていたところ、賞与額の差がAさんとC君であまりないことが分かりました。そこで、支給率を計算したところAさんの支給率は、職場が発表している平均支給率ギリギリであったのに対して、後輩のC君の支給率は、かなり高かったことが分かりました。そのために、支給額があまり変わらないことになったようです。

その中で、Aさんは、上司であるB課長に
「どのような形で支給率が決定したのか?」
と質問をしました。するとB課長からは、
「それが評価というものだ。しっかりと平等に公平性をもって評価してきた。何か問題があるか?」
と言われたので、Aさんは、
「その平等と公平性とは何なのか教えてほしい」
と更に納得のいかないところを質問しました。すると、B課長は、
「そんなことも分からないのか?だからAは、ダメなんだよ。そんなんだからいつまで経ってもリーダーにもなれないんだ。」「もういいだろ。それ以上聞くなら次の賞与はもっと低くなるぞ。」
と言われました。
Aさんは「何をもって平等で何をもって公平性なのか?」聞きたかっただけなのですが、その説明や返答はなく、それ以上に上司である B課長からは、一方的な批判、侮辱を受けたと思いパワハラだと感じたということです。

上記内容では、B課長とAさんの関係の中で起こっていることはパワハラかどうか?と言われると今回1回だけで継続性のないこともありパワハラとは言い切れない部分もあります。しかし、B課長の言い方や説明の不十分さもあるためB課長への状況聴取と言い方(伝え方)の見直しをしてもらうために、後日面談を実施しました。
B課長に話を聴くと
「少し言い過ぎた部分はある。ただ、悪気はなかった。もっと頑張ってほしいと思った。」
と認め、言い過ぎた部分については謝罪することとなりました。しかし、それだけで終わっては、次同じようなことを起こしてしまうと感じました。なぜなら、Aさんに出た言葉は、無意識に出た言葉だったからです。無意識に出た言葉を意識化するためB課長の思いを少し深く掘り下げることにしました。
「悪気がなかったのにどうしてそのような言い方になってしまったのか?」
ということを振り返ると「自分でも評価について説明ができなかった。平等と公平性というのは、研修か本で習った通りの言葉を使った。でも結局は、自分も意味を分かっていなかったので説明できずに必要以上にAさんを責めてしまったのかもしれない」と振り返りました。

この事例では、上司のB課長は、研修や本で習った通りの言葉をそのまま自分の中で理解を深めずに説明として使ってしまったことが引き金となり起こってしまった事例になります。では、B課長は、どのように説明したかったのでしょうか?
Aさんが引っ掛かった説明としては、「それが評価というものだ。評価を検討する機会(チャンス)は、皆に平等に与えている。そして、Aさんの能力やスキルを考慮して評価を行った結果だ」となります。そして、その評価は、「何を見たか?」ということは改めて詳細に伝えて、次のステップややる気に繋がるよう分かりやすい目標を与えるまでが今回の答えとなります。まずは、平等と公平の違いをしっかりとお互いが共通認識を持っていれば、このようなことにならなかったかもしれません。でも、なかなかこのようななんとなく日常的に使っている言葉の意味を共通認識できていることは少ないです。皆さんなら「平等」と「公平」をどのように説明しますか?

「平等」と「公平」の違い

「平等」とは
能力や特性(もしくは個人の努力など)によらず、偏りなく扱うこと。

「公平」とは
能力や特性(もしくは個人の努力など)を考慮し、結果として同じような利益が得られるように扱うこと。

特に職場においては、この「公平性」というものが大切になります。

人は、自然に他人と比較をしてしまいます。特に最近の人は、この比較が強く現れます。集団生活である組織の中で自分が、「不公平」に扱われていると感じると本能的に「嫌気」がさす回路が働くと言われています。そのため、人が、「不公平感」を感じた時に本能的に自分の存在感を必要以上にアピールしたり、他人をむやみに陥れるような行動を行ったり、わざと仕事の手を抜くような行動に繋がってしまいやすくなります。よって、組織においては、公平性という、その人の状況や個性を踏まえた支援や協力行動や関わり方が大切になります。

例えば会議の場などでは、上司が多様な意見を聞きたいと思うのであれば、勤務年数に限らず若手の意見を求め、発言ができる機会を与えるということは、「平等」な配慮であり、ひいては、「公平性」を保つためにも必要です。実際には、「公平」であるべきか、「平等」であるべきか、というところには、それぞれの状況に応じて使い分ける必要があり一律に決めることは難しいですが、適切な時に「平等」であり、適切な時に「公平」であることが大切です。

日頃からこの時、この状況は、「平等」なのか、それとも「公平」なのか少し考えながら過ごしてみてもいいかもしれません。

公認心理師・産業カウンセラー
    大槻 久美子

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