先の見えないコロナ禍が続いている中、ついに!これまでも何度かお伝えしてきていたパワーハラスメントが、2020年6月1日(大企業2020年6月1日・中小企業2022年4月1日)から、いわゆるパワハラ防止法として施行されました。これによって、パワハラを防止するための措置が法律で義務づけられたことになります。では、具体的にどのような法律なのか?どのような措置を講じる必要があるのか?などパワハラ防止法としてできた法律の内容を整理して解説しようと思います。
さて、「通称:パワハラ防止法」の正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)といいます。以前の「雇用対策法」ですが、2019年5月の改正でパワハラ防止のための雇用管理上の措置が義務づけられたことで「パワハラ防止法」と呼ばれるようになりました。今回の法改正にともない、厚生労働省は「パワハラ指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)」も同時に公表しています。この「パワハラ防止法」により「パワハラはダメ」と法律にて明確に述べたことになります。また、そのために平成24年1月に出された「パワーハラスメントの定義」も整理されました。
企業には「職場環境配慮義務」があるため、パワハラを含む各種ハラスメントを防止するための環境を整え、ハラスメント事案が発生した際には速やかに対処しなければならないということです。
職場における「パワーハラスメント」とは、以下3つの要件をすべて満たすものと定義されています。
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの
これら①~③までの3つの要素を全て満たすものを「パワーハラスメント」と定義しました。ただし、客観的にみて業務上必要であり、かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については「該当しない」としています。
また、この法律では、事業主・労働者の責務も明確化されています。
【事業主の責務】
■ 職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題(以下「ハラスメント問題」という。)に対する労働者の関心と理解を深めること
■ その雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
■ 事業主自身(法人の場合はその役員)がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
【労働者の責務】
■ ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと
■ 事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること
このような責務を実施するにあたり「職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置」として、以下の措置を企業側の義務として必ず講じなければなりません。
① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
加えて、事業主は労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇、その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されることになりました。
また、今回の法律改正に伴い「パワハラ」だけでなく「セクハラ」「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ)」等も一緒に取組んでいくものとしています。また、必要に応じて労働者の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、雇用管理上の措置の運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることということも今後「職場におけるパワーハラスメントを防止するための望ましい取組」とされています。
パワーハラスメントの防止については企業や事業主だけではなく、働く一人ひとりが「見て見ぬふり」をするのではなく、声を挙げていくことが必要ということなのです。
ぜひ「見て見ぬふり」をやめて働きやすい職場を作っていきましょう!
産業カウンセラー
大槻 久美子