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■事例検討集■~パワーハラスメントが職場と職員にどのような損害をもたらすのか?~ ②職場の弱体化

 

前回に引き続き『パワーハラスメントが職場と職員にどのような損害をもたらすのか?』というテーマで現状から今後の対応などお伝えしたいと思います。

パワーハラスメントは、「職場と職員にどんな損害をもたらすでしょうか?」改めて考えてみたいと思います。
色々なところで講演や研修、アンケートなどをさせていただく中でハラスメントによる職場への4つの影響が見えてきました。
① 健康被害
② 職場の弱体化
③ 生産性の低下
④ 社会的信用の低下
の4つの「低下」と考えます。
特に①の健康被害と②職場の弱体化は、とても関係が深く「職場が組織として機能しなくなってしまう=職員にとっても働きやすい職場ではなくなる」ということに繋がります。そうなれば、離職率も高くなってきます。特に良い人材ほど離職してしまう傾向が強くなります。まずは、しっかりパワハラにおけるリスクマネジメントとしてどのような「損害=リスク」があるのかを考えましょう。

②職場の弱体化
残念ながらパワーハラスメントが横行すると「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(パワハラ定義の3要件の1つ)」がまかり通ることになり、その結果、職場内のルールが守られず、逸脱行為が頻発・蔓延し、不祥事のきっかけになってしまうのです。結果的に経営破綻寸前にまで追い込んでしまうことになってしまいます。皆さんもご存じの実際にあった事例をみればよくわかっていただけると思います。

<事例1>
●2015年 大手電機メーカーTによる不適切会計事件。
大手電機メーカーが組織ぐるみで長年にわたり、儲けを実際よりも大きくみせる不正会計が発生しました。具体的には、08年4月~14年12月の間、各事業部門が、経営陣のつくった「無理な目標」を実現しようと会計ルールを破り、計1518億円もの利益を水増ししていた、というものです。これに対して、第三者調査委員会は報告書で、経営最高責任者(社長)の責任の重大さを指摘し、「多くの部署でパワーハラスメントが横行しており、部下が上司に対して異なる意見や疑問を言えるような組織風土を欠いていた」という趣旨のことを記述しています。

<事例2>
●2018年 S銀行 不正融資1兆円事件
(参考資料:2018年9月7日に公表された調査報告書

シェアハウスオーナーに対する賃料支払を中止したことに端を発するシェアハウス関連融資問題が発生しました。一旦は、融資問題かと思いきや、2018年9月7日に公表された第三者委員会の調査報告書の中で、一部役員による様々な不正と無謀なノルマ、それを力ずくで遂行させようとするパワハラ言動が混然と進行して事業部全体にまで蔓延していったことが分かったのです。報告書からいかに悲惨な状況であったか、報告の一部を抜粋して紹介しましょう。
<社内アンケートの回答より>
・ 過度な営業目標があり、目標は必達であり、達成出来ていない社員には恫喝してもよいという文化があります。
・ 7%超の無担保ローンを月に10億実行しろ、との目標は過大であると思いませんか?
・ 「なぜできないんだ。案件を取れるまで帰ってくるな」といわれる。首を掴まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った。
・ 数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた。

上記のようなことが頻発するようになると職場環境としては、極端なコンプライアンス意識の欠如が認められ、職場環境(企業風土)の著しい劣化があったと言わざるを得ません。また、こういったことが「会社のため」ひいては「顧客のため」でもなく「自分のため」というような「自己保身主義」がまかり通ることになります。そして、これだけ多数の不正行為等が長期間、多支店に渡って継続し、拡散していながら、 誰 1 人として間違いを指摘・アピールしなくなってしまいました。そこで、第三者委員会は、このような問題が起きた本源的な要因は、「経営層の、意図的と評価されてもやむを得ない断絶と放任・許容」にあったと報告しています。要するに、「見て見ぬふりをする企業風土」になっていってしまったのです。

この地方銀行のケースは、過大なノルマとパワハラの横行が会社を経営破綻寸前にまで追い込んだというやや極端な例かもしれません。しかしながら、ここまでとは言わないものの、どの組織においても発生する可能性があるものです。事例のような問題は決して特殊な事例ではないと思います。この結果を皆さんは、どのように考えられるでしょうか?

このような事例を踏まえ、自分の職場を見ていただき「自分の職場はどうなのか?」まずは、現状を見てみてください。ポイントは「一人一人がお互いに興味関心を持ち、そして、相手の立場に立って不正を正すことができる職場」かどうかだと考えています。そのような職場環境になれば人は必ず育ちます。職場からの腐敗を取り除くべく「正す必要のあるものは正す。ただし、そこには理由がある」を一つの考え方として「脱・見て見ぬふりをする職場」を実践して「強い職場」を目指しましょう!

次回は、「③生産性の低下」を事例とともにみていきたいと思います。

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