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●カウンセラーのつぶやき● ~見続けることの共感疲れ~

新年あけましておめでとうございます。
とは言え、日本は素直におめでとうとは言えないお正月になりました。
この度の能登半島地震や羽田空港で航空機同士の衝突炎上事故が発生し、全国に大きな衝撃が走っています。
北陸地方を襲った地震では、ご本人やご家族が被災されたり、すでに昼夜を問わず被災された方々の診療に当たれるなど、医療機関、福祉職場にて働かれている方々をはじめ、災害対策にご尽力されている皆様には、尊敬の念に堪えません。ここに、敬意を表しますと共に、心から感謝いたします。

元旦に起こった大きな衝撃は、家族団らんのお茶の間に胸が苦しくなるような現場の様子がどのチャンネルでも報道され、インターネットやSNSなどで広がっています。このように衝撃的な映像や写真で見たくなくても見えてしまうこの状況にどんなに元気な人でも気持ちが沈んでしまいます。こうした災害報道にどう向き合えばいいのでしょうか?
災害や事故などの衝撃的な映像を繰り返し目にすることによって、不安や心配、恐怖が強まります。また、このような不安や恐怖だけでなく、具体的に親族との別れを意識したり、何事も起きない日常から「自分はこんなに平穏な日常を送っていていいのか」と自責感や無力感を感じる人もいます。このように直接自分の身に何かが起こっていなくても、自分事と感じてしまい、精神的に疲れる現象を『共感疲労』といいます。特にこれまでに災害を経験している人は、当時の不安や恐怖がフラッシュバックしてしまうことも多々あります。人を援助したりする看護職や介護職の方は「人と人のコミュニケーション」を大切にする仕事であり、感情労働です。業務中は相手を思いやり親身になって、患者さんや利用者さんやそのご家族の話を聞いたり、どんなに忙しくても常に笑顔で対応したり、利用者さんが安心して過ごせるようにすることを第一に考え行動します。だからこそ、共感疲れに陥りやすくなります。もし、このように共感疲労を感じた時、どのように対応したらいいのでしょうか?本来、災害の情報は、現実をありのままに受け止めるためには大切なものです。ただ、どうしても共感疲労が起こりやすい人は、まず自分の目の前にあることを大切にし「今、ここ」の足元にしっかり目を向けて、感じてほしいと思います。この共感疲労の感じ方は、家族であっても、人によって受け止め方が違います。よって、共感疲労が現れるのも差があります。そのためには、繰り返しや長時間の災害現場の映像を見ることや、家事や食事をしながらの『ながら見』に注意してください。例えば、ニュースを見る時間を決めるといったテレビを見る時間を制限することも方法の一つです。また、小さな子供にはできるだけ、押し迫ってくるような怖い映像を見せない工夫も必要です。もし、不安そうにしていたのなら「大丈夫だよ」と優しく伝え、抱きしめるなど安心感を与えてあげてほしいです。もし自分の身体に不調が現れた場合、不安やイライラなどは、安心できる人に気持ちや思いをありのまま伝えたり、カウンセラーなどの専門家のサポートを受けたりすることも大切です。十分な睡眠とバランスのよい食事をとるなど、お正月休みで崩れかけている生活リズムを戻すことも大切なことです。

共感疲れの主な症状として
身体症状
・慢性的な疲労感
・頭痛・頭重
・消化不良や下痢、吐き気などが続く
・食欲の減退、もしくは過剰に食べてしまう
・寝つきの悪さ、寝ても途中で目が覚める、朝起きられないなど睡眠の量の減少
・寝ても疲れが取れない、寝た気がしないなどの睡眠の質の低下

精神症状
・怒りっぽくなったり、訳もなくイライラする
・ちょっとしたことで気分が落ち込んだり、悲しい気持ちになる
・集中力が続かない、忘れっぽくなる
・無気力、何ごとにもやる気がわかない
・不安な気持ちが沸き起こる
・自分は役に立てないといった自責の念や自己肯定感の低下

共感疲れチェックリスト
□ とにかく、いつも疲れていると感じる
□ 熟睡できていない(眠れない、眠りが浅く何度も目が覚める、など)
□ 相手のケアや話を聞いていても気持ちが動かない
□ 毎日、仕事に行くのがつらい
□ 一生懸命働いているのに達成感が全くない
□ 仕事をしていても無力さを感じることがある
□ 職場で孤立していると感じるようになった
□ 日常生活でちょっとしたことでイライラするなど、怒りっぽくなった
□ 仕事へのモチベーションが上がらず、ベストを尽くそうという気になれない
□ 原因不明の体調不良を感じることが増えた(悩まされている)

上記の項目に当てはまる個数が多いほど、共感疲労度は高いといえます。
自分自身のケアをおこなわずそのままにしておくと、症状が悪化し「うつ病」やADSと呼ばれる「急性ストレス障害」などの病気に繋がってしまいます。

能登半島地震は、発生から1週間が過ぎても被害の全容は見えず、復旧までは長い時間が必要です。
被災地を支援するためにも、まずは自分自身の心のケアも大切にしてください。

公認心理師・産業カウンセラー
    大槻 久美子

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