最近「コミュニケーション能力」という言葉をよくききますが、
それって、どんな「能力」なんでしょうか?
私の小さいころ(1970年代)、「高度経済成長」時代で、
世間は「ノリノリ」のころだったと思いますが、
我が家にはそんな風は「そよ」とも吹かなかったように思います。
実際、我が家は4軒長屋のドンづまり、
幅3メートルほどの路地を隔てた向かいは家主の邸宅、
裏はクリーニング工場で、一日中「シューシュー」と蒸気が立ち込める袋小路。
台風でも来なければ風のしずくも吹かない家でした。
どんなに暑くても団扇(うちわ)と濡れたタオルで体温調節。
後に扇風機が来ても、「寝冷えするから」とすぐに消されました。
台風のような「高度経済成長」も、我が家へは「しずく」しか届きませんでした。
そんな「恵まれない子たち(?)」の寝苦しい夜、
親子4人が6畳間で枕を並べて寝るときは、
タクシー運転手だった父の話を聴くのが楽しみでした。
特に落語は、昔の人々の生活や息遣いが私の心をはやしたて、
声が出せないくらいお腹を抱えて笑い転げました。
落語の世界では、我が家のような貧乏で、マヌケな人がいきいきと暮らしています。
なにより、登場する人たちのコミュニケーション能力はすごい!
主人公の奇想天外な言動や行動に、「あんた何言うてますねん~」とか
「おもろいお人やな~」と言いながら受け入れてしまいます。
実は「コミュニケーション能力」って「うまく話す」ことより、
「おもしろがりながら(関心を持って)聴く能力」「受け入れる能力」なんだろうな~と思います。
落ち込んで私のルームに来られた方が声を上げて笑うようになったら、
その人の「力」がでてきたサインだと思っています(私の笑い話を聴ける力?)。
(しんぶん赤旗 近畿版 7/22掲載)