先日、こんな相談がありました。
ある男性職員(28歳)の方からの相談です。 「妻は、妊娠中からあまり体調がよくなかったのですが、
なんとか頑張ってくれて 子供が生まれました。母子ともに健康でよかったです。
ただ、今回は、2度目の出産 だったのですが、なんと双子だったのです。最初からそのことはわかっていました。
また、上の子とは1歳しか離れておらず、出産後3人の子供の面倒を妻一人で みていくことは難しいと考え、
自分も育休の制度を使いたいと上司に相談しました。 その時に、上司から「育休をとったり、時短で早く
帰ったりする男には、仕事を任せられない」「子育て中の男を管理職にすることはできない」と言われたのです。
管理職など役職に関しては、なりたいと思わないのでいいのですが、 仕事を任せられないといわれると育休を
取ることがダメなことと言われたように 感じてしまいどうしたらいいか困っています」という相談でした。
さて、最近では、積極的に育児に参加する男性のことを「イクメン」といって 少しずつですが男性であっても育児に
参加することは理解されてきていますが、 一方で、このように育児休暇があるにも関わらず取得できずに仕事と
育児の両立で 悩む男性が増えてきています。国は、2020年までに男性の育児休暇取得率13%を 目標にして
いますが、2015年の育休取得率は、2.65%と増えつつあるものの まだまだ育児は、女性のものという風潮が
強いようです。
このような状況の中、今回の上司の発言は、「パタニティーハラスメント」と なりうることになってしまいます。
「パタニティーハラスメント」とは、 あまり聞き覚えがないですが、パタニティーとは、「父性や父であること」
という意味で、パタニティーハラスメントとは、育児のために休暇や時間短縮を 希望する男性に対する嫌がらせ
行為のことになります。
よって、今回のように「育休を取ることで仕事を任せない」や「管理職になれない」 また、給料やボーナスを減らしたり、
降格人事を行ったりすることや遠方への異動を 命じるなどの行為がそれに相当します。2014年大阪高裁では、
3か月の育休を取得した 男性に対して育児・介護休業法第10条において「昇給や昇格の機会が与えられなった ことは
違法である」との判決を下しました。 現在、男性と女性の一日あたりの育児時間は、男性が39分、女性が202分と
大きな差があります。育児を女性一人が担わなければならない現実が まだ多くある中、男女雇用均等法と
育児・介護休業法との見直しもされ、 「マタハラ」と同様に「パタハラ」の防止も事業主の措置義務になりました。
職場として男性も女性も仕事とプライベートの充実を図れるような 「働き方」を考えていきましょう。
産業カウンセラー 大槻 久美子